病気と漢方

子宝相談

近年、西洋医学による不妊治療技術は飛躍的な進歩をとげています。一方、不老長寿を追求してきた漢方では、身体全体のバランスを整えて妊娠しやすい状態に持ってゆくことは得意分野で歴史があります。

女性の社会進出などにより高齢出産化していますが、器質性不妊(子宮奇形や卵管閉塞など)以外の不妊であれば、上手に漢方薬や養生法をとりいれることで、自然妊娠の確率や、体外受精の成功率も高くなり、エネルギーを要する出産、育児も手助けしてくれます。

妊娠が成立するための条件

  1. 卵巣内で卵胞が成長する
  2. 成熟した卵胞から排卵がおこる
  3. 卵が卵管采より捕捉されて卵管に輸送される
  4. 精子が膣内から遡上して卵管までいく
  5. 精子と卵子が融合する(受精)
  6. 細胞分裂をしながら卵管を移動して子宮内膜に着床する

不妊の原因

  1. 男性因子
    精子数が少ない・動きが悪い・奇形、ED、射精障害
    精索静脈瘤など
  2. 頸管因子
    頸管の形の異常、頸管粘液の異常
    頸管粘液と精子の不適合
  3. 卵管異常
    感染症などによる卵管の閉鎖、卵管内の線毛の損傷
    子宮内膜症によるもの
  4. 排卵障害
    卵胞の発育不良、卵胞破裂がおこらない
  5. 卵の捕捉障害
    卵管采の変形、卵管采内の線毛異常など
  6. 受精障害
    卵子の殻が固い・質が悪い、精子が卵子の膜を
    融解できないなど
  7. 着床障害
    黄体ホルモン分泌不足、子宮内膜が薄い、子宮筋腫
    子宮の奇形など
  8. 子宮内膜症
    軽度〜重度まで器質的障害、組織からの分泌物による
    妊娠阻害
  9. 免疫
    抗精子抗体、精子凝集抗体など
  10. 上記以外

不妊症の6大検査

  1. 精液検査→精子の濃度、運動率、奇形率
  2. 基礎体温→生理周期、低温期・高温期の日数、排卵日
    排卵の有無、黄体機能など
  3. 頸管粘液検査→頸管粘液の量、透明度、牽糸性
  4. ヒューナーテスト(性交後テスト)→頸管粘液中の精子の運動性
  5. 子宮卵管造影→子宮腔の形、卵管の疎通性
  6. 経膣超音波診断→卵胞の発育状態、子宮内膜の状態
    (子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣嚢腫なども含む)

漢方療法をする場合でも、上記の基本検査は大切です。

基礎体温

基礎体温の測定は、起床時の体を動かす前に、まずは3周期ほど測定してみて下さい。

正常 異常
低温期と高温期の差が0.3〜0.5℃ 温度差がない・小さい・差が0.5℃以上
低温期から高温期への移行がスムーズ 移行がない・ダラダラと移行(3日以上)
高温期が12〜14日持続している 期間が短い・温度が高い・低い
二層性である 波動が激しい・一層性である。
月経とおりもの

月経とおりものは大切な健康のバロメーターですので観察してみて下さい。個人差が大きいため以前と違うところに気をつけて下さい。

  正常な月経 異常な月経
月経周期が27〜35日 月経日数が3〜7日 バラバラ・短すぎる・長すぎる
60〜120ml/回 2〜3日目が多い 少なすぎる・多すぎる
やや暗い赤色 薄い・濃い
ややドロッとしている サラサラしている・塊がある
痛み なし あり
  正常なおりもの 異常なおりもの
普段 白色〜薄黄色の少量 多すぎる(冷え・余分な水分が多い)
黄色い・ボロボロしている・臭いがある(感染症疑)
排卵期 透明で粘り強く量が増える 量が少ない(卵胞の発育が悪い可能性あり)

タイミング療法では、排卵日前後の3日間で、おりものが透明で粘り強くなる時が受精しやすい目安となります。

漢方による不妊治療

西洋医学と漢方の理論をドッキングさせた周期調節法(周期療法)が、中国ではよく行われています。月経周期に合わせて漢方薬を飲み分ける方法です。

他に病気がある、体力の低下、冷え、血のめぐりが悪い、ホルモン治療により卵子が育ちにくくなったり、子宮内膜が薄い、などの場合は、まず体を改善させて基礎体温を整えてから行います。

中国漢方では、生殖機能は、腎が主(つかさど)る、と考えます。
漢方でいう腎は、水分代謝をする腎臓の働きも含みますが、生殖、成長、老化、骨、骨髄などに関与し生命の根本的な働きをなすと考えます。妊娠するために必要な力は、腎が深く関わっているため、腎を補う漢方薬(補腎薬)が中心となります。卵子や精子の質を良くすることや卵巣・子宮、造精の機能を上げることも含みます。杞菊地黄丸、参茸補血丸、参馬補腎丸などを使います。

漢方でいう肝は、その働きの中の一つに、気血の巡りを調節する作用があり、現代医学では自律神経のバランスを整えると捉えることができ、現代のストレス社会では、肝の機能を整えることも大切になります。逍遥散などを使います。

それに加えて、日本人は胃腸の弱い方が多いため、まず消化吸収力をつけて、食べたものをしっかりと体のエネルギーに変えることができるようになることも重要です。この働きを漢方では、脾の力を強めると考えます。香砂六君子湯、人参湯などを使います。

また、別の観点から、身体全体の生理機能を営む 気血水(き・けつ・すい)が過不足無く充実して巡っていることも必要です。不足している場合は、それを補う漢方薬を、滞ったために身体にとって邪魔になる場合には、それを取り除く漢方薬を使います。

不妊症の薬膳

不妊症は、とにかく体を冷やさないということを徹底的に肝に銘じて下さい。飲み物は夏でも常温以上で、フルーツも食べる1時間前ほど前に冷蔵庫から出して下さい。

体質別に適する食材をご紹介いたします。毎日下記の食材を献立に取り入れてみて下さい。

不妊症の生活の基本
  1. 生殖機能をつかさどる腎を強めることを意識してください。黒いもの、海のもの、腎を強くする補腎効果のある食べ物をしっかり摂ります。
  2. 体を冷やすと腎が弱ります。外からも内側からも決して冷やさないで下さい。
    下記の食材を、煮物や鍋物、汁物に入れるなど、温かい料理にして食べて下さい。
    生理中は必ず下半身を冷やさずに、上より下を一枚多めにはいて下さい。
  3. ストレスは赤ちゃんができるのを妨げます。
    とにかく気分をリラックス!ご主人様とのお二人の生活を、心から楽しんで下さい。
不妊症に適する食材
不妊症に適する食材
黒豆、黒ごま、黒きくらげは血液を増やしたり、血をさらさらにする上、黒い食べ物は、その効能が腎に入ります。血液不足(血虚)の方、血の流れの悪い血体質の方はもちろんのこと、若さを保つ腎を強めるため、積極的に摂りましょう。
海の食べ物
陰虚体質の方は、補腎陰効果の高い牡蠣、ナマコ、すっぽん、アワビ、ハマグリなどの海の幸をおすすめします。一度にたくさん食べる必要はありません。貝類は1回に2〜3粒で充分効果があります。その分、週に1、2度は召し上がって下さい。
生殖機能をアップさせる食べ物
エビ、ホタテ、ニラ、ニンニク、クコの実は精をつけて生殖能力そのものを高めます。下半身の冷えが特に気になる方にも、これらの食材は大変適しています。精子を増やすには牡蠣、または山芋や里芋などのネバネバ系もおすすめです。